本谷有希子『江利子と絶対』


江利子と絶対

江利子と絶対


短編2作と中編1作を収録した本谷有希子の作家デビュー作。ヒキコモリの妹とその姉について描いた表題作のほかに、どうしようもなくダメな中年男性と謎の醜女の出会いを描いた「生垣の女」、いじめっこといじめられっこが不思議な屋敷に潜入するサイコホラー「暗狩」。
この本はなにやらもう絶版のようでヤフー・オークションでは定価以上で取引されていた。偶然にもアマゾンで中古販売されているのを発見して安価で即購入した。
表題作は普通に面白く読めたが、残りの2話は本谷の他の作品同様に素人臭いというか稚拙な印象は拭えない。ネタのモチーフなんかはさすが舞台の脚本で馴らしていると思えるのだが、なにせ文章がギクシャクしまくっていて読みづらい。これが若い人の日本語なのか?オカシイ部分が多々あったぞ。「江利子は…、江利子は…。」一文に同じ主語が2度登場している部分もあって失笑してしまった。伏線の張り方もミエミエ過ぎてがっかりする。ライターと灯油タンクが出てきた時点でああなる結末は容易に想像できた。
舞台が非常に面白い分、小説の方のイマイチさが残念だ。文学大全集っていうよりも大衆小説集じゃないかい?