白バラの祈り―ゾフィー・ショル、最期の日々(シャンテ シネ)

監督 : マルク・ローテムント
脚本 : フレート・ブライナースドーファー
出演 : ユリア・イェンチ 、アレクサンダー・ヘルト 、ファビアン・ヒンリヒス
     ヨハンナ・ガストドロフアンドレ・ヘンニック


原題『Sophie Scholl-Die letzten Tage』。第2次世界大戦中のドイツ、ヒトラーの第3帝国に水面下で抵抗をみせた「白バラ」と呼ばれる組織の女学生ゾフィー・ショル(21歳)とその兄がミュンヘン大学構内で反ナチスのビラを撒いて逮捕され、拘留・尋問・裁判の末に処刑されるまで(わずか6日間…)を描いた史実に基づいた作品。
ストーリーはいたって単純、登場人物は少なめ、音楽も必要最小限、絵的にも非常に静謐な作りで、そのぶん気が散らないというか嫌でも意識をスクリーンに集中させて息を止めるように観てしまうようにできていた。以下、感じたことを何点か。
敗戦の色が濃くなってきたドイツを良い方向へ導こうという愛国精神を持った「白バラ」。ゾフィーナチス側に尋問されるシーンがみどころ。良心に基づいた確固とした意志を堂々と語る姿は胸を打つものがあった。言葉のひとつひとつに正義感が漲っており、尋問官を見据える眼はまっすぐで綺麗で世界平和への望みで満ちていた。
次に裁判のシーン。ナチスの高圧的な裁判官に対してもゾフィーら白バラの3名は決して屈せず自らの意見を貫こうとする。ゾフィーの「良心」という言葉には非常に重みがあり、一緒に死刑判決を受けた兄の友人・プロプーストが裁判官に言い放った「次に裁かれるのはお前だ!」という言葉にはゾクっとした。
裁判後、ゾフィーら3人が処刑される場面。兄妹最期の抱擁。両親との最後の対面。死の直前であっても自分たちの運動の正当性を訴える表情は深く――ギロチンに首をのせたゾフィーの透明な眼には、数年後の終戦と壁崩壊後の将来の平和なドイツが見えていた、そうに違いない。
他に思ったこと。衣装が良い。当時のドイツの学生がどんな服を着ていたかは知らないが、知識層の飾らない雰囲気に加えてどこか彼らの愛国心を醸し出しているような、そんな印象を受けた。ナチス側の軍服や裁判官の服にも独特の深みがあった。



ここまで見応えのある作品にはそうは出会えない。適当にWEBでチェックして観てみたら驚嘆の見応え。第55回ベルリン国際映画祭で最優秀監督賞と最優秀女優賞を受賞、ドイツではすでに観客動員100万人を突破、日本の映画関係者はもっとこの作品をプッシュすべきだ。観てない人は必ず観とけ!


白バラの祈りゾフィー・ショル、最期の日々:http://www.shirobaranoinori.com/