NODA・MAP第11回公演『贋作・罪と罰』(Bunkamuraシアターコクーン)
倒幕ムード高まる江戸時代末期の波乱をロシアの文豪・ドストエフスキーの名作になぞらえた野田風の時代劇。菱形の舞台を360°から観るという円形劇場のように設えられた会場内を見てまず驚いた。しかもセットらしきものは何も無く、小道具として古びた木製の椅子と2m長くらいの棒状のものが4本あるだけだった。
訳あって人を殺めた者の苦悩を描くという基本的なストーリーは原作?にわりと忠実で、約二時間、展開は速く内容はギッシリだったが先が読めるのでなんとかついていくことができた。
『人間はすべて凡人と非凡人との二つの範疇に分かたれ、非凡人はその行動によって歴史に新しい時代をもたらす。そして、それによって人類の幸福に貢献するのだから、既成の道徳法律を踏み越える権利がある。』
質屋の老婆を殺した三条英(松たか子)が自らの哲学と罪の意識に終始悩みぬく様は圧巻。前半がわめきたてるように話していた分、後半のしっとりとした独白が余計に浮き立っていた。坂本竜馬を演じた古田新太の落ち着きぶりと貫禄もお見事。
何が正しくて何が間違っているのかわからなくなるようなこの時代だからこそ、このようなテーマで魅せてくれた野田秀樹はやっぱりすごい!