吉田修一『最後の息子 (文春文庫)』

最後の息子 (文春文庫)

最後の息子 (文春文庫)

パーク・ライフ (文春文庫)』を読んでみてかなり気に入ったので吉田修一という作家を追求してみることにした。それでさっそく文学界新人賞受賞作のこれを買ってみた。
まず彼の作品の特徴として、簡潔で読みやすい文体が良い。余計な技法やギミックには頼らず、男らしくストレートに綴られている。そんなこざっぱりとした文中に、気の利いたコトバや印象に残る言い回しが要所要所で顔を顕すのだから効果抜群。読み手は惹かれる。

表題作は新宿のオカマちゃんたちの後ろめたくものんびりとした生活をビデオカメラで綴ったデビュー作。
それよりも本巻最後の「Waters」が非常に素晴らしい!高校最後の大会を目前にした水泳部主将のストイックで甘く切ない生活を描いた力作だ。真剣にスポーツに打ち込んだ人間はぜひ読むべし。特に3年生男子4名の強い結びつきに関しては上手く書かれている。部員それぞれのキャラ設定も秀逸だ。

吉田修一、もっと注目されてもいいのになぁ。そういえばこの人の作品にはセックスシーンがない。