岡崎祥久「南へ下る道」読了

南へ下る道

南へ下る道


この作品もマジ最高!岡崎祥久という作家は自分の中ですっかり阿部和重町田康よりも上にランクされてしまった。


前半は謎のブオトコ・醜男が友との再会を目指し北海道から東京へ南下する旅と、伸一&和子の地味な若夫婦の労働を中心とした生活の模様が、交互に、世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド的(または海辺のカフカね)手法で、後半は軽自動車を手にしたその若夫婦の東京から九州への旅が、淡々とゆる〜く描かれてる。

日常の何気ない会話や無意識のうちの行動についての心温まる描写が読んでて癒される。旅の過程で困難に直面したりトラブってしまったり、逆にささやかな喜びを感じたり夫婦の愛情を確認したりと、ごく普通に生きる、生きていたって所詮ただの肉たる底辺のつまらない人間の生きる意味・価値を読み取ることが出来るのだ。地道でひっそりとした人生を歩んでいくことがこんなに素晴らしいことに思えたことはない。

特筆すべきは和子の穏やかなキャラクターだ。パン屋や靴屋でのつまらない労働の場面、初対面の醜男とのやりとり、初めて訪れる街々でのホテル・食事等に考えをめぐらす場面、、、人間臭いことこの上なく好感度抜群!思いつきで電化製品を購入する伸一へのリアクションもいい。
パン屋襲撃すべし、の部分にはも思わず爆笑した。


電気屋に勤務しその後リストラされてしまう伸一、パン屋でアルバイトをしクビになったのち靴屋で働く和子、このあたりの描写は諸書で述べられているようにまさにプロレタリア文学といえよう。
働くのはつらいよなぁ〜。