『言葉の森に棲む』（月見ル君想フ）
新千歳から羽田に着いて、そのまま直で盆明け最初のライブに行ってきた。イベントタイトルがウマい。坂口安吾か、泉鏡花か、京極夏彦か、そんな香りの語感だ。出演するのは日本語の面白さを巧みに表現するアーティストばかりである。見逃せない、聴き逃せない、石橋英子×アチコが登場するのはなにやら最後のよう。8時半過ぎに入場したらちょうどトリ前の倉地久美夫＋山本達久の演奏が始まるところであった。古風めなことばづかいで生臭く妖艶で独特の世界観を作り出していた。山本氏のドラムはいつも歯切れが良くて気持ちいいものだ。ビールの空き缶を数珠繋ぎにした楽器がイイよね。ガラガラガラガラガラガラガラガラ。
さて、そしてその次に石橋英子とアチコがともに頭にお花を飾ってひょっこり登場した。なんと1曲目は‘春と小石’！今までずっと最後に演奏してきた曲をとっぱじめにもってきたというわけで、なんだかそれだけでいままでとは違う感じでライブを楽しめそうな気がした。いつもよりも意識的に低い声を多用したようなアチコのスキャットが素敵だ。石橋のエレピもいい具合で力が抜けていて曲の持つ柔和さが増していく。続いて久しぶりに聴けたのは‘夜鷹の星’。それから音源化されていない‘pino’と‘マタドール’、すっかり完成されていて見事に聴き応えのある曲に仕上がっていた。‘Apartment’ではBメロで盛り上がる部分でのアチコの声の伸びが素晴らしく、天井の高い会場の隅々にまで綺麗に響き渡っていた。その次のアルバムの表題曲‘LOLA&SODA’のイントロのスリリングなピアノはいつ聴いても気分が高揚する。この曲を後半に持ってきたのはなんとなく正解のような気がした。本編ラストは石橋英子のソロアルバム『Works for Everything』からのセルフ・カヴァー・‘光る窓に’。もとからこのユニットの曲であったかのように自然で、やっぱりアチコの歌はほんとに良いものだと感慨深く思ってしまった。。。
アンコールでは定番の‘犬のうっとりさん’。最後の最後に聴くとなぜかいつもよりも和める曲に聴こえた。曲調は同じようなモノが多いかもしれないが、ピアノアレンジ・歌詞・メロの抑揚や声の張り艶など個々に聴きドコロが存分に詰まっているおかげで曲順を大胆に入れ替えた今日のライブでは時間の経ち方や空気感がガラリと変わったように感じられた。なんとなく今まで聴いてきて気づかなかった部分に触れられた気がしたが、新鮮さとはこういうものなのだろう。
いつものことだが自然と集中して聴き入ってしまう。30分強の持ち時間があっという間だった。
■ 石橋英子×アチコ ■
１、春と小石 ２、夜鷹の星 ３、私のお気に入りじゃないもの ４、pino ５、マタドール
６、Apartment ７、LOLA&SODA ８、光る窓に〜encore〜
９、犬のうっとりさん
今年のマイ・ベストアルバム
