上原ひろみ『Time Control (Hybr)』

タイム・コントロール

タイム・コントロール


従来のメンバーにデビット・フュージンスキー(G)を加えて4人編成になり、「HIROMI'S SONICBLOOM」と命名された新ラインナップで録音された4thアルバム。鬼ギタリストが加わったということから想像されるとおりのファンキーでエレクトリックな(シンセサイザーの出番はこれまでの作品よりもさらに多い)新路線に歩を進めている。テクニック、ソングライティング、アレンジ、どれをとっても能力の高さと音楽に対する執念の深さがうかがえて、まだまだ彼女の引き出しの在庫は豊富であることが伝わってくる。「いままでやってなかったけどこれからやりたいこと」はたくさんあるのだ。ピアノ(シンセ)とギター、コードもメロディーも弾ける楽器が2つになったことで表現の幅はさらに広がり、両者はときに綿密に絡み合い、ときに息ぴったり融合し、ときに激しくぶつかりあう。
アノトリオとして集大成的大傑作、ナチュラルでヒューマニスティックな前作『SPIRAL』からここへ変貌は驚くに値する。今作はリフやメロのところどころにいわゆる「ジャパフュー」の香りがするのだが、日本のポピュラーミュージックの持つどうしようもないダサさを無意識に抱き合わせてしまったように聴こえなくもない。デキが悪いわけではないがゲームミュージックのような曲もある。WEB上でさまざまな感想を見てみても賛否両論なようで、‘Deep into the NIght’等、柔らかで電子色の薄い「以前からの上原ひろみ」らしい楽曲のほうが完成度が高く感じられるという意見には私も同感だ。まあ今ラインナップでライブを重ねてバンドとして音が固まっていけば(トリオ編成のときがそうだったように)、HIROMI'S SONICBLOOMも自身の過去を凌ぐ物凄いチームへと変わっていくであろう(期待込み)。アルバム一枚だけではまだ評価しかねる。


日本盤ボーナストラックは完全に蛇足だ。


84点。