『アジアの女』(新国立劇場 小劇場)


作・演出:長塚圭史
出演:富田靖子近藤芳正菅原永二岩松了 峯村リエ


ただ長塚圭史の作品が観てみたい(ネームバリューに惹かれて)だけという軽い気持ちでチケットを取り、行ってきた。京王線初台駅直結の新国立劇場、ちょっと前までかの有名な某ファミレスがあったのでしばしば側を通ることはあったが実際に中に入るのは初めてだ。大きすぎて嫌味臭さ満点かもしれないがピカピカでゆったりしたロビーや客席の十分な傾斜等、よく考えて作られており居心地が良くて観やすい会場である。




大震災で倒壊した家屋に隠れ住む兄妹と、兄の知り合いの無能な作家、地元の若手警察官、震災ボランティアで活躍するちょっと怪しげな美女、、、混乱した状況下で生きることに必死な者たちの交流を表現したひっそりとした演劇であった。地肌むき出しの地面に1階部分がまるごと埋没した家を中心としたセットは力強く強大なインパクトを発していた。音楽も笑いの要素も下ネタも必要最小限、、、玄人向けなのかもしれない。登場人物の言動から微妙な心の葛藤を読み取ることができなければ観ていてもツラい作品だ。そんな中で奇妙なキャラクターの作家を演じる岩松了と恋する警察官・菅原永二の演技はメリハリが効いていて見応え十分であった。ヒロインの富田靖子は役をそつなく演じてはいたものの、もうちょっと個性が欲しかった気もする。困難な状況と他者の思惑との狭間に揺れる難しい役だ。
ストーリーは淡々と進むが終盤でやっと動き出す。『アジアの女』というテーマは非常に重いものであったのだが突然国際間の問題へ転換していく様子はややギクシャクしていてな唐突な繋がりに思えた。もう少しスムーズに持っていけなかったものか。。。役者陣の演技は概ね良かったが、、流れ的にはちょっとマズいような・・・。それでもまばゆいラストシーンは印象的で脳裏に強烈に焼きついた。