上原ひろみ 『スパイラル(初回限定盤)(DVD付)』

スパイラル(初回限定盤)(DVD付)

スパイラル(初回限定盤)(DVD付)


先日はテレビ朝日題名のない音楽会』・NHKトップランナー』に出演、今月12日から始まったJAPAN TOURのチケットは売れまくり、飛ぶ鳥落とす勢いとはまさに現在の彼女のこと、人気ピアニスト・上原ひろみの待望の3rdアルバムがついに発売された。今までどおり全てオリジナル曲だ。前作同様レコーディングは米国ナッシュビルで行われ、トニー・グレイ(b)とマーティン・ヴァリホラ(ds)という強力な布陣とともに隙のない完璧な作品に仕上げてくれた。
「ピアノトリオという編成でどこまで幅広い音楽をできるかに挑戦したかった。」という今回のアルバム、インタビュー等で語られているように、ベースがメロディラインを弾いている裏でピアノがタイトなリズムを刻んでいたり、ピアノの裏でリズムを刻んでいたドラムが突然メロディーが浮かぶような巧みなプレイを聴かせてくれるような場面が多々みられる。そのような工夫によって3人で演っているとはとても思えないような独特の奥の深い作品となっている。言葉で説明するのは難しいな。ただ3者が勝手我儘にプレイしているということではない。それぞれの持ち味と役割、曲の流れと見せ場・聴かせドコロ、これらのことをフルに表現し切ろうという明確な意図のもとに巧妙にアレンジされているのが一度聴いただけでわかるのだ。
そのうえ前2作と比べても楽曲のレベルが各段にアップしている。3人で編成されたバンドが文字通どおり一体となって曲に彩りを与えていけるようにうまく練り上げられ、感動を誘うように作られている。起承転結があり、構成もバッチリ。シンセをフィーチュアしたプログレハードな曲もあれば、クラシックのオーケストラもビックリな幻想的で壮大な曲もある。伝統的なJAZZの色の濃い心温まる曲もあれば、涙を誘うスローバラードもある。時間的に長いアルバムではあるが飽きないように、疲れないように曲が散りばめられている。
やはり子供の時から意識的に熱心に演奏し続けてきた怪物はタダモノではない。まだ20代なのにこんなスゴいアルバムを作ってしまった。バンドでアレンジをする人にぜひお薦めしたい。音の渦(スパイラル)に心が高揚すること間違いナシだ。聴いてない人は人生損してると思うよ。

93点。