東京ピンサロックス『rhythm channel』

rhythm channel

rhythm channel


インディーズ界を代表する女性バンドのファーストフルアルバム。これまでのファンキーで弾けるような楽曲をメインにした路線から一転、なんと今作はほぼ全編にわたってピコピコ電子音を大々的にフィーチュアし、トンチを効かせたマニアックでヒネくれたポップソングが13曲並んだものとなった。
まずアルバムジャケットを見てニヤリ。近未来的でカラフルで『Somewhere in Time』かと思ったが、アルバムの内容が上手く表現されている。
肝心の中身のほうは既発の2枚のミニアルバムと比べると躍動感が薄いので地味に聴こえるかもしれない。しかし、知恵を駆使し、凝ったアレンジで聴かせるという根本的なバンドの魅力はまったく色褪せていない。どこかサイケでちょっぴり内省的な作風やアナログ調のシンセフレーズはPINK FLOYDを彷彿させるものがある。聴いたことのないようなヘンテコなアレンジやヒネクレポップセンスはXTCを思い出したりもした。やっていることは今の日本のロックシーンの中では風変わりかもしれないが、聴きづらい作品かというと全くそんなことはない。抑揚に富む歌メロは非常にキャッチーで親しみやすく、柔らかで人間味溢れるナオコ(Vo)の声は誰の耳にもよくなじむであろう。独自の色を推し進める部分と聴く者の多くを惹きつける部分とのバランスが十分取れている。
‘スウィートルーム’や‘プルトニウム’、‘WEEK’、かなり前からライブで披露されていた曲も多いが、ライブで聴いたよりもこのCDのほうが実験性が高く、「新星ピンサロックス」の確固たる世界観が浮き出ている。
技術的にもレベルは高く、フツーじゃない4人が化学反応しあう様は聴き応え十分。バンドでアレンジする人はぜひこのアルバムを聴いて参考にしてみたらいかが?



87点。