シヴヤで「トニー滝谷」を観たよ <ネタバレ満載>〜ユーロスペース〜

トニー滝谷」オフィシャルサイト
http://www.tonytakitani.com/


監督・市川準、主演・イッセー尾形宮沢りえ、音楽・坂本龍一、原作・村上春樹(短編集「レキシントンの幽霊」より)



超豪華なラインナップで20年ぶりに春樹の小説が映画化された。

全編を通して主人公の孤独感が巧く表現された慎ましやかで静謐な色合いの作品だった。白を基調とした清潔なセット、シーンに見合った教授の穏やかなピアノプレイ、ひっそりとした西島秀俊のナレーション、春樹ワールドを忠実に映画化したといえよう。

さすがと思ったのはやはりイッセー尾形一人二役)の演技。表情の作り方や台詞なんかはもう誰にも超えられないと思えるほどの孤独感抜群な雰囲気があった。
カメラワークもかなり革新的で左→右のスクロールが印象的。物語の世界観を非常に巧く観やすく捉えていた。


逆に物足りなかった点をいくつか。

まず宮沢りえ一人二役)、残念だが、結婚したのにあまり幸せそうに見えなかった。前半部の服を買いまくる場面はどうしても「プリティ・ウーマン」のジュリア・ロバーツと比べてしまう、、、もうちょっと華やかさがあってもよかったのではないか。後半部の衣裳部屋での泣き方もお粗末。アルバイトの面接に来るシーンとラストのおばさんと話してる場面がとても可愛かったのが救い。

二つ目はストーリー。取って付けた様なラストシーンはいただけない。。。原作を読んでいない人が観ても不自然に感じられるのではなかろうか。トニーと結婚を決めた理由もあまり納得できなかったし、事故で死ぬシーンもあっさりしすぎに感じた。

三つ目は音楽。こういう雰囲気モノの映画音楽というのは非常に難しいと思う。物語にはマッチしていたしキレイな演奏は素敵だった。だが、天下の教授にしか出来ないことか問えばどうだろうか?


トータルな世界観や画質・イメージで勝負の、ある種実験的な映画である。特に春樹ファンは見る価値十分にアリ!